瀬戸と鎌倉の「びゃくしん」について
瀬戸神社の境内で大きな古木といふと、カヤ(榧)の木があります。そのほかに、銀杏やイヌマキ、ケヤキ、また鳥居横のクスノキなどがありますが、その他に忘れてならないのがビャクシン(柏槙)です。
境内に横たはる「蛇混柏」は延宝八年(一六八〇)の大風で倒れて以来、今日まで朽ちずに残ってゐるもので、江戸名所図絵には既に倒れた状態で描かれてゐます。



(瀬戸のビャクシンは新編武蔵風土記稿などでも「混柏」と表記されます。)

琵琶島(弁天島)には、混柏の枯れた幹が多数残ってゐますが、島の中央には、一本の混柏が半身は枯れても残り半身がシッカリ生存してゐます。是非、枯れることのないやうに保護してゆきたいものです。





社務所側階段の脇にも元気な混柏が二本あります。
ところで、この柏槙は寺社の境内で多く見掛けます。全国各地に見られますが、殊に鎌倉の古社寺には古い大木が残ってゐます。円覚寺にも建長寺にも、鶴岡八幡宮の境内にもあります。
建長寺には仏殿の前栽として七本の古大木がありますが、これは宋代の前庭様式を踏襲したもので、開山蘭溪道隆が中国から持参した種を建長寺創建の時にまいたものと伝承してゐます。
このやうに柏槙の古木があるといふことは、禅宗寺院の庭園の影響を受けた鎌倉時代の社寺の伝統を継承してゐるところだと言へませう。
「蛇混柏」も建長寺や円覚寺の柏槙と同じ頃に植ゑられ、弁天島の参道にも同様に柏槙の並木が作られたのでせう。